フェミニストが「まほやく」始めて即沼った話
■「まほやく」のストーリーが超面白いと聞いた
人生初ソシャゲへの誘い
「布団の中から蜂起せよ」の著者である高島鈴さんが、自身が一年以上続けているソシャゲについて紹介していたのをSNSで見かけた。
当時2023年の5月、そのソシャゲのキャンペーンに際してのツイートだった。
まほやくの良さについてはここに書いたhttps://t.co/X8pNx1AhTv
— 高島鈴🏴単行本発売中! (@mjqag) May 20, 2023
高島さんのtweet
「魔法使いの約束」というソシャゲの、ストーリーがめちゃ面白いとのこと。
ストレスなく楽しめるコンテンツらしい、ということで俄然興味が湧いた。
推してる人が推してるコンテンツって気になりますよね?
この人のオススメする物なら信用できる…目を通しておくか…ってなる時あるじゃないですか。それです。
▼既に賢者の人も、まほやく知らない人も、まず高島さんの記事読んで欲しい。
“まほやくの長命キャラクターは、家族のことや生まれた土地のことをほとんど覚えていなかったり、覚えていてもそこに全くこだわりを持っていなかったりする。それがまず「生まれからの解放」を感じさせてくれて、心地よかった。
“魔法使いの長いパーソナル・ヒストリーの中で、重心の置かれる対象がそれぞれ異なっているのを見ると、人間の時間軸から外れた道理が感じられて開放感がある。”
文章うますぎか…紹介の仕方上手すぎん?
物書きを生業にしてる人が、読み物としてそんなに面白いと感じるソシャゲがある。
え…ちょっとやってみたい…って思っちゃうよね。
私はまんまと思いました。
でもソシャゲかぁ…今まで通ってこなかったんだよな…
男性キャラに囲まれるの、なんかちょっと苦手意識あるんだよね…
などと思いつつ、でも気になりすぎ、記事を読んだ翌日にダウンロードした。
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賢者デビューからの沼直行
『異世界に“賢者”として召喚されて、世界滅亡の危機に立ち向かう』
…なんか何度も聞いたことあるお話のような気がするよね。わかる。
私も「まぁちょっと、どんなもんか覗きに来ただけですよ…」ってテンションで始めた。
けど、あっという間に魅了されてズブズブにハマりました。
ものもらい&眼精疲労になるほど熱中してストーリー読んだ(自業自得)。
「まほやく」、とにかく深すぎる設定が多い。
🧙 魔法使いは長命で、数百年・数千年も生きれる
🧙 魔法使いは、魔力が成熟した年齢で身体の成長が止まる
🧙 魔法使いは一人でも生きていける
🧙 召喚された賢者は、いつか忘れられる
🧙 魔法は心で使うもの
🧙 魔法使いは“約束”してはいけない
🧙 魔法使いは死んだら石になる
などなど、ここで説明するよりプレイしてもらった方が早いので、やりましょう。
読み物として、ハチャメチャに面白かったし、勇気をもらえた。
魔法が使えても使えなくても、誰しも自分の心のまま、自分の時間を自分なりに生きていいんだ、と思わせてくれた。
作中で織りなされる千年単位の人物関係、相容れないものとどう接するか、
それぞれの美学や死生観、何に心を砕くか・何から心を守ってきたか。
賢者の魔法使い21人全員、自分と同じ人間としての人格や葛藤がある。
600年生きてても、パンを焦がしたら凹むんだ…そんな生きてても気にする事なんだ…なんか可愛いな…ってなる。
この世界が、魔法使い達の価値観や関係性が、すごくすごく良かった。
hellな現実も、なんとか生きるぞと希望をもらった。
きっかけとなった記事を書いてくださった高島さん、本当にありがとうございます…
私の人生に「まほやく」を与えてくれたことに感謝…
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■人生初の、二次元の推し
今まで、小説や漫画・アニメにハマっても、特定の一人のキャラに対して猛烈に日常を掻き乱されるというのはなかった人生だった。
好きな作品に出会っても、作品まるごと、世界観や人物の関係性や会話の言い回し、そういう全ての要素に対して心躍らせていた。
なので作中の人物を「いいな!!!」と思う時は、誰かとのやり取り、その人物をとりまく環境も含めて好きになっていたのだ。
一人だけを贔屓目に見て愛でるという発想がなかった。
もちろん、まほやくもそうだ。
いや、そうだった。
読み進める毎に、この世界・この物語も、全て魅力的で丸ごと好きだ〜と思っていた。
2周年イベストで、ネロ・ターナーが激昂するシーンを見るまでは。
…私の推しの話は別記事にしますね、次にいけないんで。
ちなみに、「まほやく」始めて今2ヶ月位ですが、
公式ファンブック2冊買ってきてファンアート描き始めたし、
公式レシピ本も買ったし、「まほラジ」も聴いたし、
「まほステ」も配信のチケットで見たし、
今は自作ぬい作ろうとして布買ってきて型紙作ってます。
我ながらビックリする勢いだよ。
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■ゲームを始めて“ええやん…”と思ったところ
・“賢者”(プレイヤー)が、一人の人間として尊重される
ゲーム開始時に、主人公である賢者の性別を男女で選択する必要があり
(その性別二元論なのはめちゃ嫌だけど)、
でも、その選択の結果変わるのは、一人称が俺/私かの違いだけ。
キャラクターから呼ばれる時は、“賢者”かごく稀に自分で設定できる名前のみで、
あまり性別の意味は無いです。自分のビジュアルもプレイしてる時は出てきません。
他のキャラから男扱い/女扱いされず、“賢者”としての不思議な力があるだけの一人の人間として扱われます。
それがめちゃ気が楽でストレスが無く、ストーリーに入って行きやすい。
女だから守ってやるとか、都合のいい時だけ女/男扱いを持ち出される読み物、本当にうげ〜〜〜って思ってたので…
ぜひ他のコンテンツも見習って欲しい。頼む。
性別関係なく対等に接してくれ。むしろ性別選択は必要ないなら無くていい。
ノンバイナリーや自分の性別を男女のどちらかに決めたくない人にも配慮した性別選択になったら最高。
性別を通して自分を眼差されないって、こんなに快適なのかと思った。
精神的安全性めちゃある〜ありがてぇ〜〜〜
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・価値観・気質、みんな違ってみんなイイ
魔法使い21人もいるって、めちゃ大変じゃん?名前覚えるのも一苦労だったよ最初。
でも、それぞれの個性や人生観や価値観や行動理念が、ストーリーの中で誰一人被ったり蛇足だったりしてないんです。
本当にどうやって物語の交通整理してるの…すご…
そして何より、21人に独自の個性はあるんだけど、所属している国毎に共通の気質がある、というのがめちゃ良い。
正義感が強くて、冒険心溢れる中央の国の魔法使い。(怖いもんなしな陽キャが多い)
独自の美学を重視する、社交性もありつつ突拍子もない事が好きな西の国の魔法使い(変人が多い芸術家肌)
孤独を好み馴れ合いを嫌いつつ、規律を守る東の国の魔法使い。(巻き込まれ主人公な気質)
優しく人助けが好きで、温厚な南の国の魔法使い。(一番話が通じて安心する)
プライドが高く、己の力だけを信じる北の国の魔法使い。(やべー奴らばっかなのに幼稚園感ある)
いやいや、個性豊かすぎ〜と思いつつ、
💡 あ、それはわかる。自分もこういう風に考えることはあるな…とか、
💡 うわ〜こいつ…!そういう経緯があって、この行動原理になってるのか…!とか、
頷きが止まらなかったり、新たな視座を得たり、とにかく奥行きがあって味わい深すぎなのだ。
そしてそれだけ個性豊かで、絶対まとまってくれなさそうな魔法使い達が、
目的や使命や己の意地のために、衝突したり協力したり、歩み寄って信頼したりする。
異なる価値観や経験の者達の群像劇。面白いに決まってる…!!!
異世界から召喚された賢者として魔法使いに寄り添いながら、
考えや価値観は、みんな違って当たり前だということを、よくも悪くも突きつけられ噛み締めるのだ。
主人公である賢者も、魔法使い達自身も、その違いを尊重して歩み寄ることで、関係が構築されていく。
現実もそうありたいよ…マジで…必要なのは対等な立場での対話よ…
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・各々の魔法使いが抱える“クソデカ感情”の尊さ
魔法使い21人の間に、その人物間だけに存在する特別な関係性がある。
師弟・元師弟・幼馴染・主君と従者・元相棒・育ての親・いつか決着をつけたい因縁の敵・裏切り裏切られた相手…
長い魔法使いの人生では、過去に絶たれた関係が、時を経て別の形で繋がることもある。
魔法使いという存在は、人間である賢者とは異なる力と価値観を持っていて、どうしたって全貌を知り得ない。生きてる時間感覚も違いすぎる。
でもその人生の中に、切っても切れない関係性や、拗れた執着があって。
それを打ち明けてくれたり、自慢げに語られたり、バレても必死に誤魔化されたりすると、
たちまちその人物の魅力が立体的になって、解像度が爆上がりしてしまうのだ。
その関係を見守るのが、楽しくて仕方なくなってしまう。
💬 このピュアネスをずっと見守りたい!と思う関係もあれば、
💬 あ〜あ…そんなんだから嫌われるんだよ、マジで反省しな?と、
呆れながら見守る関係もある。
その関係の微妙な変化に、価値観・関係をアップデートして成長する姿に、一喜一憂するようになってしまうのだ。
そして、恋愛や家族愛に絡め取られない関係性ばかりなのが、何よりの推しポイント。
簡単に名前がつくような距離感・関係性でないからこそ、ずっとそのままであって欲しいと思う。
恋人関係でなくても確かに愛情は存在するし、変化する関係の中で、変化しない想いもある。
シスヘテロ男女の恋愛だけが、人生の最重要テーマでみんな通る道!みたいな一般論にしないでほしい、現実も。切実に。
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※フェミニスト的に見過ごせない残念な部分もある
基本的には、めちゃ寄り添って支えてくれる言葉達ばっかりなんです。まほやくの世界。
エンパワメントしてくれるセリフが多いからこそ、
え〜〜〜なんで???どうしてそこはそういう言い方なん???
ってなっちゃう部分も、ちらほらある。
⚠️ある人物を聖人扱いして祝日まであるけど、実際は火刑にした歴史を国が改竄してる
(ジャンヌ・ダルクにした事と変わらんよ)
⚠️差別はないけど偏見はあると言うセリフがある
(いや偏見ってモロ差別だよ)
⚠️母親にもなれないまま死んじゃったと憐れむセリフがある
(子の有無でその人の幸せを他人が勝手に測ってジャッジしないでくれよな)
そういうの罷り通るのマジであかんぞ???と真顔になる文言があったりする
それはシンプルに残念です。惜しい。悔しい。
人権ちゃんと守ってくれ。
分断を野放しにして助長しないでくれ。
制作してる人達にも認識をアップデートして改めていってほしい。
まほやくの世界が100%良い事ばかりの完璧な世界じゃないとしても、
そういう認識が“普通”として存在して押し付けられる事にモヤる。
魔法使い達も一緒にモヤってくれるならまだしも、そこに絡め取られないで欲しい。
その意味の重さを誤ってほしくない。問題を軽んじられたくない。
自分の人生を自分のものとして生きることの切実さを、魔法使い達は知っているはずだから。
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■この世界を、この戦いを見届けたい
色々と言いましたが、「まほやく」とにかく面白いんですよね…
これだけの関係や設定が錯綜しつつ、ちゃんと皆絡み合って繋がっていて、
常に「この後どうなるの〜!!!」と七転八倒させる展開なのがすごい。
あの時の話も伏線としてここに繋がるの!?みたいな展開、好きオブ好き。ありがとう。
まほやくにハマると、歌詞に“約束”って入ってる曲が全部意味合いが変わって、エモさ桁違いに聞こえる症状が出ます。
これから始める方々、延々ストーリー読むのは時間溶けるし目も大ダメージ喰らうので、どうか適度な休憩を大事に。
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